聞く力/阿川佐和子
雑誌で対談連載を千回以上行ってきた、対談のスペシャリストの阿川さん。
そんな彼女の「聞く」ということをテーマにしたエッセー集です。
文章が軽快でさくさくっと読めます。
対談の際の失敗談もたっぷり書かれていて、それが良いアクセントになっています。
また、本に出てくる著名人や芸能人は大物揃いで、エピソードもインパクトのあるものばかりです。
黒柳徹子さんの対談エピソードが印象に残ってます。
徹子さんは小学生の頃に将来国際スパイになるのが夢だった。
これをクラスメートの男子に話したら、『あなたはおしゃべりだから無理だ』と言われてあきらめた、という話には、思わず吹き出しました。
最後の方に遠藤周作の対談で
「…一見躁鬱的軽薄に見えるこの話の中に、実は奥深い意味と象徴を見つけることのできる読者と、それができない読者がいるでしょう。」
と言われて、この言葉を阿川さんは人生の指針として胸に刻んでいるという話が出てきます。
ここではっとしたんです。
この本自体が、この遠藤氏に言われた言葉そのものを表している本だったんだ…と。
方法論ではなくエッセーなので、読んだ後に聞く力がすぐ身につくといった即効性はありません。
しかし、ジワジワと『聞く』ということの本質が見えてくる。
そんな本だと個人的には思います。
*1:文春新書